「不景気で儲かりません、危機です」が挨拶言葉になっています。

仮に儲かっている企業でも、儲かっているとはこのご時勢、誰も言わないです。
経済の論理からして、儲かっていない会社があれば、儲かる企業があるはずですし、円高で苦しんでいる企業があれば、円高を歓迎しているところもあるはずです。

朝から晩までのテレビをみても、新聞を読んでも、厳しいニュースばかりです。
厳しいニュースの方が“絵になる”ので、メディアはそちらの方に走ってしまうのではないでしょうか。

逆作用による元気な会社はないのかと思っていたところ、ありました!



株式会社カスタネットと言いたいところですが。。。違います。

鉄などの素材に近い材料を一部加工して、販売している中小企業です。

その社長と数年ぶりにお会いして、私の方から「厳しい業界と思いますが、会社の方は大丈夫ですか」と質問しました。

すると、社長が小声で話しはじめたのです。(立ち話で周囲に人がいました)


「植木さん この経済危機で売上が30%ダウンしたが、儲かっています。メーカー主導から私たちの時代になりました。 植木さん、わかりますか?」

わかりますかと質問されても。。。会社経営が危ないのではないかと質問した私にとって、30%売上がダウンしても儲かっているとは、到底理解できませんでした。
(同じ質問を社内で質問をしましたが、私と同様でした)

社長は、小声でその訳を説明してくれました。

今までは、価格が厳しく素材メーカーとユーザーの間に入り、加工作業が入っても粗利益は10%もなかった(口ぶりからして7%~10%と予想しました)

そのために、社長も従業員も現場で朝から晩まで働いても、儲からず、会社の維持がやっとの状態だったようです。
そこにやってきた、昨年前半の原油、鉄鋼など素材の値上ラッシュ、そして経済危機。

ユーザーからは値下げ要請があり、少し答えているとのこと。


値下げしても儲かっている? 不思議な話しです。

その答えは、素材メーカーの経営環境にありました。
日本国内の素材メーカーは、減産のため生産ラインを止めると、再稼動のために莫大な費用がかかるので、生産ラインは止めたくない。
販売は、円高なので海外に出荷ではなく、日本国内で値引きをしても販売したい。
つまり、販売力のある会社には特別価格の提示があるのです。
それも、不景気度が増すごとに値引きが多くなっているとのこと。

顧客への販売価格もメーカーからの仕入れ価格の両方の主導権を握った結果、粗利益が10%以上~40%にもなっているそうです。

昨年の値上ラッシュ以前、それ以下で価格交渉が出来ているからです。
売上が大幅ダウンしても、利益が増える(最高益を更新)のが理解できました。

私から次の質問をしました。
激安価格でメーカーから仕入れることは出来るのは、販売力があるからですね。
過去、薄利の商売でも耐え抜いたからチャンスが生まれたと思います。
同業他社で販売力がない会社は、安値仕入れが出来ず、売上減の分だけ苦しいのではないでしょうか。

社長からは「その通りです」

100年に一度と言われている経済危機、考え方を変えると100年に一度のチャンスかもしれない。不況業種も含め、全ての産業に言えることかもしれません。

ただ、事例の通り何もしなくてもチャンスは生まれるのではなく、コツコツとやってきたご褒美だと思います。
ご褒美をもらえる企業とそうでない企業、生死を分ける結果になるのは間違いありません。